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アートバイタル通信

Vol.2 アングル

すべすべ肌と曲線美の巨匠 
ドミニク・アングル

妄想力は80代でも衰えず

今回ご登場いただくのは、1800年代に活躍した新古典主義の巨匠ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルです。と書くと何だか堅苦しくて小難しい感じになりますが、このアングル、終生追求したのが女性の裸体の美しさ、と聞けば印象は変わるるでしょうか。しかも特徴的なのは、過ぎるほどのすべすべ肌と曲線美-。その代表作が「グランド・オダリスク」です。  

グランド・オダリスク 1814年
(ルーブル美術館)


 筆跡(タッチ)を残さないことを重んじる古典的な技法で、当時流行していたオリエンタリズムの雰囲気を取り込み、けだるくゴージャスなイスラムのハーレムの女性を描きました。どうですか、この滑らかな肌。他の画家の追随を許さない、きめの細かさです。でも、この女性をよくよく見てみると、異様に胴長短足。もちろん、デッサンが狂ったわけではありません。女性の腰の曲線美を強調するため、アングルはあえてこのように表現しました。もう一枚、女性の裸体をこれでもか、と描き連ねた作品をご紹介。

トルコ風呂 1862年
(ルーブル美術館)

「トルコ風呂」は女性のすべすべ肌、曲線美がぎゅうぎゅう詰めのてんこ盛り。その美しさを演出するため、四角いキャンバスを丸く切り取ったほど。男性であるアングルはもちろん女性風呂に入ったことはありません。つまり、これはすべてアングルの想像、いや妄想の上で成り立っている作品なのです。
 実はこの作品を描く数年前、アングルは30年以上連れ添った最愛の妻を亡くし、悲しみに暮れていました。その姿を見かねた友人の紹介で2番目の妻をめとるのですが、そのときアングルは72歳、そして肖像画で挑発的なポーズをとる、ちょっと気の強そうな新妻は43歳。は30歳近い年の差婚でした。

デルフィーヌの肖像 1859年
(ウィンタートゥール、オスカーラインハルトコレクション)


 「トルコ風呂」は再婚後、旺盛な創作意欲がよみがえった中で描かれました。作品の中央で美しい背中を見せながら楽器を弾いている女性に注目してください。この姿、半世紀近く前にアングル自身が描いた「ヴァルパンソンの浴女」と瓜二つではないですか。は歳を超えても筆致と描写力が全く衰えていないことに驚かされます。
 恐るべし、アングル爺さん。その源泉はアングルに活力を注ぎ込み、画業を支えた若き妻だったのでしょう。
 ちなみに、アングルにとって自信作だったに違いない「トルコ風呂」ですが、依頼主の妻から「卑猥すぎる」と突っ返されたそうです…。

ヴァルパンソンの浴女 1808年
(ルーブル美術館)

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